たいらげたら眠る

今ウトウトしてたでしょ?

羊の木を観て

(考察というほど大層じゃない感想、思い出したら増えます)



・最後のエンドロール、錦戸 亮の文字が左上の方から右下へ降りてきて、7分目辺りに来たときにゆっくりと滲んで消える。消え方が不思議で何処かぞわぞわすると思っていたら、段々画面が明るくなって見えたのは空と海だった。文字は降りてきていたのではなくて、海に落ちていってたんだ。お腹の底に溜まっていくような少し気味の悪い心地がした。


・ベースを弾きながらギターを見るりょうちゃんが新鮮だったし、部屋で龍平くんに教えてあげるシーンでようやく見慣れた錦戸くんに戻ったような感じだった。(事前情報無しで見たのでめちゃくちゃびっくりした… ほほえみ…)


・宮腰くんが助手席の文を押し倒すところ。直前に文は月末から宮腰くんが元殺人犯であることを聞かされていて、さらにそのことを宮腰くんは月末からまた謝られて知っている状況下で。押し倒した瞬間、明らかに自分のことを怖がっている文の目を見て、最初から相容れないことを分かっていたとしても、ああもう戻れないことを察したのか/諦めたのかな、って思った。


・「友だちとして」月末に深い内面(たぶん話されるだろうことは分かってた)も話してきた宮腰のことを文に(案の定)言ってしまった月末は凄く人間らしかったし、どうしようもなく一人の男だった。最後の最後に月末の首を絞めきれなくて、手を離した宮腰はどんな気持ちだったのか。「月末くんが勝つとおもうよ」と告げて、掴まれた手を引っ張り崖から飛び降りたあの瞬間に宮腰はどんなことを思ったんだろう。


・先に水面から顔を出したときの宮腰の表情が、焦っているように見えたけどあんまり思い出せない。



・崖の上で月末が「友だちだろ?!」と宮腰に詰め寄るところ、ええ〜〜〜?過去ばらしといてよくそんな堂々と言えるな??とちょっとびっくりしてしまった… けど、そういう少し欠けてる部分が人間らしい。そしてなんやかんや宮腰はこの瞬間まで月末に対しては何も危害を加えてないんだよなあ。


・ぜんぶ終わった後、月末の乗った車の前を通り過ぎる文のバイク。目が合った瞬間に「ラーメン」と口パクで伝える文の言葉の意味が理解できないといった顔で数秒固まっていた月末。あれだけ望んでいたことなのにきっとすっかり忘れてしまっていた、自分が文に投げたお誘いだったのに、理解した/思い出した月末はじわじわと嬉しさを噛み締めて「…ラーメン!」って呟いたの、あんなことがあっても日常って割りとすぐに戻ってくるしそもそも日常ってなんなんだろうなと思った。


・月末に自分の過去のことを話した宮腰は、話し終わった後の月末の反応をみて「怖くないの?」と聞いたけど、あれは相手の反応が思っていたより薄いことに怯えながらと問うたのではなくて、多分「なんでだろう」「いつもと違うな」と純粋に思ったから聞いたんだろうなと思う。目の前で寝ちゃった月末を見たときに「いつも(今まで自分と接してきた人たち)と違う」から穏やかな宮腰のままで月末の為に電気を消して、起こさないようにギターの音が届かない屋外まで歩いていくことができた。直前まで前科の話を聞きたがっていた月末は自分のことを「友だち」だと言うしこのままでもいいかな、と思いつつ。でもさっきそういえば殺してきたんだった、と思いつつ。変われない自分を認めたのと、月末から聞いたのろろさまの話を思い出したのはどのタイミングだったんだろう。月末の家に訪ねる前?後?「海に行こう」と誘った瞬間?




過去に絶対消せない過ちを犯したら一生、死んでもきっと許されることはなくて、その痛みの中で生きていくのが“償う”ということなんだろうなと思う。この作品の登場人物は全員が元殺人犯で、私は第三者だから、残った人たちがこの先とりあえず10年ちゃんと与えられた場所で償っていければいいなと思った。人というのは本当に難しい生き物だと思ったし、答えなんて実はどこにもないんだと言われているようだった。


舞台挨拶中継は錦戸亮含め、役者さんをしっかり立てる監督が印象的でした。お一人ひとりが重厚でちょっぴり恥ずかしがり屋なところが魅力的で「またこの役者に会いに来てください」という監督の言葉を反芻しました。後、りょうちゃんの市役所職員姿が大好きなので、今後もぜひよろしくお願いしたいです。


2/9 追記